龍の書7

ショルグ神1

人よ、よくぞここまで辿り着いた。多くの人は、この書を開くことなくワクトに召されたのだ。
神々に与えられた力をよく磨き、精進を怠らなかったお前を称えよう。
七の書は、お前たちがショルグ神として崇める武術の神々の話を伝える。
これは我ら龍族に伝わる話に、シファとアニルより聞いた話を合わせ、我がまとめたものだ。
なにせ我も知らぬ神代の事、これが真実かどうかは判らぬが。

ショルグ神2

コークはソの国マシャウに生まれた。
当時のマシャウは不穏な町で、幼くして両親を失った彼は、地の下を通る水の道に住み、人の財を掠めて暮らしていた。
ある夜、遂に捕らえられ、裁きの間に引き出される事となった。
ソの国には、法に背いた者を兵士として鍛え、悔い改めぬ者は砂漠へと追放するという法が有った。
彼は兵士となる事を選んだ。兵士と成ったコークはたちまち頭角を顕した。

ショルグ神3

ジマはナクの国エレクに産まれた。
ジマの父はオージに仕える官吏で、オージの屋敷にジマを連れていくことがあった。
屋敷の兵士が訓練する様を見るうちに、ジマも体術の訓練を真似るようになった。
ある時、オージの屋敷で開かれた御前試合に興奮したジマは、闘技場に飛び込んだ。
捕らえようとする兵士たちを、この少年は瞬く間に打ち倒してしまった。

ショルグ神4

これを見て大いに喜んだオージは、すぐさま彼を召し抱え、本格的な体術を仕込んだ。
持ち前の速く力強い拳を以って、彼は3年でナクの国随一の体術使いとなった。
オージがトーゴーの招きによって、ソの国を訪れた時、彼はオージの右で一軍を率いる将と成っていた。
ソの国マシャウで、神々の定めた運命の糸が縒り合わせられようとしていた。

ショルグ神5

トーゴーが神の御旗を掲げたとき、オージはこれに付き従った。
ある時、トーゴーの天幕で二人の王は互いの兵と将の自慢話に花を咲かせた。
興に乗った彼らは、互いの将を賭けて狩りをすることにした。トーゴーが敗れ、オージはコークを得た。
オージはコークの軍とジマの軍を巧みに使い分けて敵を撃ち破り、二人の将はその雷名を轟かせた。

ショルグ神6

南の国を、平らげで凱旋する船上で、彼らの軍は嵐に遭った。
島を見つけて入り江に逃れ、彼らが浜に上がると声が響いた。驚いて顧みると、そこに船は無く、白く輝く姿があった。
二人が畏れかしずくと、白き神は言われた。「力強き者よ。お前たちはかの国で罪無き人をも手に掛けた。悔い改めよ。さも無くば永劫の闇にさ迷う事となろう。」と。
将が神の名を問うと、ワクトと答えられた。

ショルグ神7

それより後、二人の将はワクトの神をあつく信奉するようになった。
祈りを欠かす事無く、徒に激昂する事が無くなった。
また、戦の前には敵を説き伏せる事に務め、血の流される事を避けるようになった。
やがて彼らの軍勢は人々から仰がれるようになり、血を流すことなく治めるようになった。
後の人は、コークとジマをそれぞれ、神の翼、神の拳として、武術家のならうべき則とした。

ショルグ神8

シリュースは神々より魔法の力を授けられた最初の人であった。
シリュースは各地を巡り、額に輝きの輪を宿すものを見出しては魔術を授けた。
シリュースに続くものは数を増し、その中にミダと言う少女がいた。
ミダはひときわ魔術に優れ、シリュースが魔法の力の研究に打ち込む時には側に控え、その助けとなった。
やがてシリュースは、禁じられた神々の遺産を研究するようになった。

ショルグ神9

神々の遺産の封をあばき、闇の衣を身にまとったシリュースは、人々に災厄をもたらした。
ミダは、シリュースが闇の衣から解き放たれるよう、神々に祈りを捧げた。
祈りを聞き届けられたワクトはミダに矛を授けられ、ミダはその矛を以ってシリュースから闇を祓った。
こうしてシリュースの魂は神のもとへ還された。
ミダはその後、魔術を伝えながら200年を数えた。最期まで乙女の姿を保っていたと言う。

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